中秋の名月
夜になって時々窓から空を見上げた。
厚い雲が空を覆っている。
ところが、十時過ぎから雲が消えていき、まあるい月が中天に浮かんだ。
駐車場の真ん中に折りたたみのアームチェアをひろげる。
左右に蚊取り線香を置き、どかっと座って双眼鏡で月を見上げる。
焼酎の水割り、カンチュウハイ、焼酎のお湯割りと三杯飲む。
雲がなくなる頃から風がひいやりと心地よい。
月は大空に開いた穴のようでもあった。
穴を抜けると見たこともない世界が広がっているように感じた。
亡くなった両親や師匠や友人が、何事もなかったかのように暮らしている。
そんな風にも感じた。
良い書からは音楽が聞こえてくる
新聞に九州、沖縄代表作家展の書作品と顔写真が出ていた。
実物ではないのでよく分からないが、写真で見る限り作品は、洗った刺身という感じで新鮮味がない。
書は難しい。
うまくなると新鮮味がなくなったりする。
と同時に、日本のため、地域のため、会社のため、組織のため何々書道会のためといううそを考えていた。
『書』はその人がストレートに出るから、何々のためと言い、自分自身にうそを言い続けていると書品が落ちて俗になる。
新聞の『書』にはそんなものがチラチラ見えていなかったか。
何々のためという掛け声にはうそがたくさん混じっている。
『書』をそんな狭いところに囲い込むのにはちょっと不満がある。
良い書とは、新鮮で、ハッとして、ウッときて、ジーンとしびれ、アアと思い、フゥーンと感じ、シミジミする。
そして、豊かな音楽が聞こえてくるものだと思う。
そんな『書』が書きたい。
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