2011年10月1日土曜日

夢のかけらNo.63『中秋の名月』 2011年10月1日号



中秋の名月



夜になって時々窓から空を見上げた。

厚い雲が空を覆っている。

ところが、十時過ぎから雲が消えていき、まあるい月が中天に浮かんだ。

駐車場の真ん中に折りたたみのアームチェアをひろげる。

左右に蚊取り線香を置き、どかっと座って双眼鏡で月を見上げる。

焼酎の水割り、カンチュウハイ、焼酎のお湯割りと三杯飲む。

雲がなくなる頃から風がひいやりと心地よい。

月は大空に開いた穴のようでもあった。

穴を抜けると見たこともない世界が広がっているように感じた。

亡くなった両親や師匠や友人が、何事もなかったかのように暮らしている。

そんな風にも感じた。



良い書からは音楽が聞こえてくる

新聞に九州、沖縄代表作家展の書作品と顔写真が出ていた。

実物ではないのでよく分からないが、写真で見る限り作品は、洗った刺身という感じで新鮮味がない。

書は難しい。

うまくなると新鮮味がなくなったりする。


と同時に、日本のため、地域のため、会社のため、組織のため何々書道会のためといううそを考えていた。

『書』はその人がストレートに出るから、何々のためと言い、自分自身にうそを言い続けていると書品が落ちて俗になる。

新聞の『書』にはそんなものがチラチラ見えていなかったか。

何々のためという掛け声にはうそがたくさん混じっている。

『書』をそんな狭いところに囲い込むのにはちょっと不満がある。

良い書とは、新鮮で、ハッとして、ウッときて、ジーンとしびれ、アアと思い、フゥーンと感じ、シミジミする。

そして、豊かな音楽が聞こえてくるものだと思う。

そんな『書』が書きたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿